鉄筋コンクリート造りのビル・マンションなど、大規模な建築物だったら構造計算はしっかりしてあるはずだけれど、「木造戸建て住宅の構造計算はどうなっているのだろう?」と疑問に思っている方や、「木造戸建て住宅は構造計算書が要らない」と耳にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
木造在来工法の住宅には構造計算書の提出を免除される「4号特例」という不思議な規定があります。
木造戸建て住宅の構造審査を省略する「4号特例」
一般的な木造戸建て住宅(2階建て以下)は「4号建築物」「4号建物」と言われ、確認申請時に構造計算の審査を簡略化することが認められています。※注: プレハブ工法の家を含まず、日本で昔から採用されてきた木造在来工法の住宅が対象です。
「4号建築物」とは
木造在来工法で建てられた2階建て以下の住宅はほとんど「4号建築物」に当てはまります。「4号建築物」とは、建築基準法第6条第1項第4号で規定する建物のことです。具体的には以下の条件に当てはまる建築物を言います。
「4号建築物」と認定されるための条件
- 不特定多数の方が利用しない建物
- 木造の建築物
- 階数2以下
- 延べ面積500m2以下
- 高さ13メートル以下
- 軒の高さが9メートル以下
この内容を見ると、3階建てを除くほとんどの木造戸建て住宅が該当することがわかります。
「構造計算の審査を省略化できる」とはどういうこと?
上の5つの条件に該当する木造戸建て住宅は「4号特例」とも呼ばれ「審査の省略化」が認められており、建築士が設計していれば確認申請時に構造計算書を添付する必要はありません。計算書がありませんから構造について行政はチェックをしていないということになります
もし「この建物は構造計算書が要らない」という言葉を聞いたことがあったら、このことを指しています。ただし、注意したいのは審査を省略できても「構造の安全性をチェックしなくても良い」ということではないということです。
構造の安全性のチェックはどんな建物でも必要
2階建て以下の木造戸建て住宅でも構造の安全性を確認する必要はもちろんあります。確認申請時の審査が省略されているだけで、守らなければならない計算や仕様のルールが決まっています。
一般的な木造戸建て住宅で行われている構造のチェック方法
それでは「一般的な木造戸建て住宅の構造の安全性のチェック」の内容を見ていきましょう。
多くの場合「建築基準法施行令の第3章構造強度第3節木造」及び「第2節構造部材等」に規定している方法でチェックをしています。そこには主に3つの簡単な計算方法と8つの仕様が決められています。
3つの計算
1. 壁量の確保(壁量計算) | 地震力や風圧力に対抗するために必要な壁(耐力壁)の量が確保されているかどうかのチェック |
2. 壁配置のバランス(四分割法) | 耐力壁がバランスよく配置されているかどうかのチェック |
3. 柱の柱頭・柱脚の接合方法 | 柱の上下がしっかり緊結されているかのチェック |
これらのチェックをそれぞれ計算式によって確認します。
8つの仕様
次に取り上げる8つの部分については建築基準法に定める仕様を守ることとしています。
1. 基礎 | 5.横架材の欠込み |
2. 屋根ふき材等の緊結 | 6.筋交いの仕様 |
3. 土台と基礎の緊結 | 7.火打材等の設置 |
4. 柱の小径等 | 8.部材の品質と耐久性の確認 |
例えば、「基礎」では基礎の断面の形状や配筋方法など構造方法を規定しています。また「屋根ふき材等の緊結」では、屋根ふき材や外装材が風や地震で落ちないよう、留め方が規定されています。
大規模建築物の場合は構造計算が必要ですが、4号建築物の場合は求められていません。3つの計算と8つの仕様に従って建物が設計されていれば、「過去の事例・研究」に従ってほぼ安全性は確保されていると考えられます。しかしそれは建築士次第となり、行政がチェックすることはありません。
どうして「4号特例」ができたの?
「4号特例」が執行された背景には、昔から2階建て以下の木造住宅の多くは棟梁、大工さん、工務店さんが経験と勘で建ててきたことに起因していると考えられます。
また戸建住宅の場合は、問題があっても小規模で社会に与える影響が小さいと考えられていることも理由の一つだと考えられます。
木造の構造が実験や計算を踏まえて数値化されたのは、木造の歴史でいうとごく最近のことですから、コストと時間が掛かる構造計算書の提出を免除することで小規模の建築業を保護するという主旨から作られた法律です。それに、2階建ての木造だから多少設計者の判断に違いがあっても大きな問題にならないという意味もあるのでしょう。
4号特例をめぐるトラブルも
ところが、2006年に一部のハウスビルダーが壁量すら足らない住宅を1000棟近く販売していたことが発覚し、2009年12月に国土交通省が「4号特例」を廃止すると発表しました。
この発表で業界では、一時「今迄そんなことやったことがない」「どうすりゃいい」「お金がまたかかる」と大騒ぎになりました。そんな騒ぎになったことからか、いつの間にか「4号特例の廃止」自体が廃止されてしまいました。
このように、一般的な木造戸建て住宅(2階建て以下)については、この3つの計算方法と8つの仕様を守っていれば構造の安全性を確保していると見なされます。
構造チェックを確認しよう
以上に述べてきたように一般的な在来木造、2階建て以下の建物では、確認申請時には、構造関係の審査の省略が「4号特例」で認められています。しかしそれは構造の安全性のチェックをしなくて良いということではなく、建築基準法で定められた計算方法と仕様規定を設計士が守って設計するだろうから「審査しない」という意味です。
これからご自宅を新築される場合は、確認申請で書類の提出こそ要求されませんが、これらの方法によってしっかりと建物の構造の安全性がチェックされているかどうか建築士に確認すると良いでしょう。最近では在来工法でも構造計算書を出してくれる工務店もあるようです。
「4号特例の廃止が廃止」になった代わりに、国土交通省が出した法律が「長期優良住宅法」
長期優良住宅は名前の通り、「長期に存続可能な優良な住宅に対して、補助金や金利などの優遇をしましょう。」という目的を持っています。実はそれだけではなく、設計技術の底上げも目的にしているようです。図面の書き方から、その基準、整合性まで細かく審査されます。オーバーに言うと、工務店さんがこれまで作っていた図面は全然ダメで、かなり改善しなければなりません。更に、性能もチェックされるので、その構造が耐震基準を満たしているかも調べられますし、伏図も提出しなければなりません。
長期優良住宅の申請をするために必要な図面は、4号特例を廃止にしようとした時に、「確認申請に必要とする図書」とほとんど内容も質も同じです。急な切り替えが出来ず廃止が難しいと分かったため、こうした方法でレベルを上げて行こうとしているのではないかと思われます。
長期優良住宅の認定取得条件 | 条件の内容 | 具体的な基準 |
---|---|---|
耐震性 | 地震に強く、倒壊しにくい安心の家 | 耐震等級2以上 |
耐久性能 (劣化対策) | 構造や骨組みのしっかりした長く住める家 | 劣化対策等級3相当 |
維持管理・更新の容易性 | メンテナンスの容易な家 | 維持管理等級3 |
住戸面積 | 必要な広さが確保された、暮らしやすい家 | 75m2以上:2人世帯の一般型誘導居住面積水準 |
省エネルギー性 | 地球にやさしく、家計にもやさしい家 | 断熱等性能等級4 |
居住環境 | 地域のまちなみと調和した家 | |
維持保全 (維持保全管理、住宅履歴情報の整備) | 「住まいの履歴書」付きの、長く快適に住み続けられる家 | 少なくとも10年ごとに点検を実施すること |
オスカーホームは構造計算書を全棟提出しており「長期優良住宅認定」が対応可能です。
長期優良住宅の認定取得対応しているオスカーホームでは、1棟ずつ個別に構造計算書を作成し、長期優良住宅の基準に適合していることの審査を受けています。
住宅性能表示制度にもとづく「設計住宅性能評価書」を標準で取得
「設計住宅性能評価書」取得には、認定基準に適合する10分野の住宅性能表示基準の内、必須となる4つの分野のをクリアする必要があります。
住宅性能表示制度の基準(必須4分野)
①、構造の安定に関する事——————地震・災害時の倒壊しにくさ損傷の受けにくさについて評価します。 OSCARは最高等級である【耐震等級3】が標準
②、劣化の軽減に関する事——————柱や土台などの耐久性を評価します。OSCARは【劣化対策等級3】をクリア
③、維持管理・更新への配慮に関する事——配管などの点検・清掃・補修のしやすさ、更新対策などの評価。【維持管理対策等級3】をクリア
④、温熱環境・エネルギー消費量に関する事———省エネルギー対策として、壁や窓の断熱・結露防止などの評価。OSCARは【断熱性能等級4】【一次エネルギー消費量等級5】をクリア
行政が構造関係の審査をしないという現状を考慮し、お客様に長く安全に安心してお住まいいただけるように、第三者の審査を受けておこうという考えからです。このような認定基準を取得することで、「地震に耐える住宅」ということだけでなく、地震から命を守り、被災後にも直ぐに生活を再開できる「安心・安全な家」に住んでいただくことが住宅会社の使命であると考えております。そのことにおいては譲れない会社のポリシーとなっております。