断熱材の選び方と特徴を解説
現在の住宅建築において、「夏涼しく、冬暖かい快適な暮らし」は必須な条件となっています。省エネやSDGsの観点からも住宅の断熱性能は非情に大事な要素となっています。断熱材のことを知っておくと、どこにどのような断熱材が適しているかも理解できるようになると思います。
目次
◆断熱材の種類を選ぶポイント
種類が豊富な断熱材ですが、選ぶ際はどういったポイントを抑えるべきでしょうか?
まずは断熱材の種類を選ぶポイントについてお伝えします。
◎ 断熱性能(熱伝導率)はどうか
断熱材とは、言葉のとおり熱を遮断する性能がある材料・材質のことです。
そして、断熱の性能は熱伝導率という値で表されます。
熱伝導率は断熱材の特性や厚みによって変わり、熱伝導率が低い=熱を通しづらい、つまり断熱性能が高いということです。
熱伝導率が低い素材ほど高性能です。
断熱材の量や厚みの調整は、自分で判断が難しいと思いますので、建築業者に相談して検討しましょう。
◎ 熱と湿気に強いか
断熱材の性能は、熱と湿気にも影響されます。
熱と湿気に弱い素材は外環境に影響されやすいため、使用する場所に注意が必要です。
◎ 燃えにくいか
断熱材が燃えにくいかは、断熱材を選ぶ上で重要なポイントといえます。
万が一、自宅や近隣住宅で火災が発生した場合、延焼をできるだけ食い止めるのは断熱材の役目です。
耐震性と同じように、万が一に備えて大切な人を守るために、断熱材は燃えにくいものを選ぶことが大切です。
◎ 燃えたときに有毒ガスが発生しないか
火災が発生した時の主な死因は一酸化炭素中毒といわれています。
シアン化水素は吸い込むと意識喪失や死に至る場合があり、皮膚からも吸収されるため危険です。
住宅火災の場合、有毒ガスが発生する要因は断熱材だけではありませんが、危険性があることは覚えておきたいです。
断熱材の素材は大きく分けて3つあります。3つのカテゴリーごとに、素材の種類と特徴を紹介。
◆鉱物繊維系断熱材
◎主な特長
・価格が手頃なので広く普及している
・高い断熱性能を得るためには厚みが必要となる
・耐燃焼性が高い
・防音材としても使用され、防音性と吸音性を有する
・防湿材の施工が必要
◎グラスウール
ガラスを熔解して繊維状にし、接着材を吹き付けて形成した断熱材です。
以前は、結露やズレ下がりなどが指摘されていましたが、施工技術の進化や性能の向上などにより現在はそうしたマイナス面が解消されています。
不燃材料としても認められています。
◎ロックウール
玄武岩や鉄鋼スラグなどを溶かして繊維状にした断熱材です。
外張り断熱工法で使用されることが増えています。
◆石油系断熱材
◎主な特長
・プラスチックの主原料である石油からつくられる断熱材です
・施工がしやすく断熱性が高い上、湿気に強いものが多い
・厚さに対して断熱性能が高いものが多い
・独立気泡構造のため、防湿性が他の断熱材より高く、結露防止効果が高い
・形状が板状なので、外張り断熱や床断熱ができる
◎ビーズ法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂に発泡剤や難燃剤を添加してビーズ状にしたものを発泡形成した断熱材です。
耐水性があり、軽くて衝撃にも強く、発砲スチロールとして知られています。
◎押し出し法ポリスチレンフォーム
硬質で耐圧力があり、吸水、吸湿性が低いので湿気に強いです。
外張り断熱工法や家の基礎部分の断熱によく使われています。
◎硬質ウレタンフォーム
ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えて形成しています。
建築現場での吹き付け施工が出来るので、よく使用されています。
◎高発泡ポリエチレンフォーム
他の石油系の断熱材より柔軟性があるので狭い部分に充填しやすい。
◎フェノールフォーム
フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えて形成しています。
長期的に安定して断熱性能を保つ特長があります。
防火性にも優れています。
◎ポリエステル
ペットボトルを再生したポリエステル繊維で作られています。
熱を加えると形状が固定されるので接着材が不要です。
ホルムアルデヒドを発生しません。
◆自然系断熱材
◎主な特長
・身近な素材を使用していて環境に優しい
・化学物質や接着剤の使用をおさえた住宅施工ができるため、健康面にも配慮できる
・比較的新しい素材のため割高なものが多く、施工できる業者が少ないことが課題
・防音材としても使用され、防音性と吸音性を有する
◎セルロースファイバー
新聞の古紙などを粉砕して線状にした断熱材。
吹き込み(雪を積もらせるように敷き詰める方法)と、吹付(壁などに直接固着させる方法)があります。
グラスウールより吸音性が高く、自然系の中では一番歴史があります。
◎ウール
羊毛は、原料となる羊毛に人体に優しい防虫加工が施されています。
羊毛を使用した衣服をリサイクルして製品化されていることが多く、防虫加工は半永久的といわれています。
羊毛は調湿性に優れていることが特徴で、断熱材として結露対策に最適です。
さらに、調湿性能がある羊毛ならではの高い断熱性や耐久性があることも魅力です。
自然系の中では比較的安価です。
◆断熱材は厚いほど高性能?
お客様から「断熱材って、厚ければ厚いほど性能が高いですよね?」というご質問をよくいただきます。
簡潔にお伝えすると、半分正解で半分不正解です。
断熱材を沢山入れた方が、中の空気が逃げにくいのでその理論は合っていますが、壁の厚さもある程度決まっているので、その断熱材自体の性能値も良いものにしなければ、意味がありません。
例)壁の厚さ 90㎜の場合
・性能値が高い断熱材の場合、厚さ45㎜の断熱材を入れれば必要な断熱性能値が取れます。
・性能値が低い断熱材の場合、厚さ120㎜の断熱材を入れなくては必要な断熱性能値になりません。
壁厚90mm-断熱材120mm=-30㎜不足ということになり、壁厚が足りないので、120mmの断熱材は充填できず、100%の性能値が出ない可能性があります。
天井・壁・床に必要な断熱性能に合わせた断熱材を採用されることをお勧めします。
今回は、断熱材の種類についてお話させていただきました。
次回は、熱伝導率についてお話したいと思います。