持ち家、賃貸それぞれのメリット・デメリットは?
住宅は、持ち家と賃貸のどちらがいいのか?」ということがよく言われています。
「持ち家」と「賃貸」には費用、資産としての評価、そして実用面など、それぞれにメリットとデメリットがあります。
今回は、それぞれの特長をまとめてみましたので、その違いを理解していただければと思います。
目次
持ち家、賃貸それぞれのメリット・デメリット
◆持ち家のメリット
・住宅や不動産が資産になる。(社会的信用度が高まる)
・ローン完済後は住居費が固定資産税や管理修繕費のみになり、老後の年金生活を維持していくためには有利になる。
・団体信用生命保険に加入すれば、住宅ローン契約者(主に世帯主)が万一死亡・高度障害状態になった場合に、以降のローンを支払わなくて済む。
・自由設計なら間取りや内外装・設備などを自分たち好みにカスタマイズできる
・リフォームも自由なので、家の中をバリアフリー化するなども自由にできる。
・持ち家があることは、資産としての満足感や安心感にもつながる。
◆持ち家のデメリット
・家の購入時にある程度まとまった費用(諸費用・頭金・手付金など)が必要。
・ローンが完済されるまで実際には自分の資産とは言えない。
・所有している限り固定資産税などの税金がかかり続ける。
・経年劣化による修繕費、水回りやバリアフリー化のためのリフォーム費などがかかる。
・マンションの場合は、管理費や修繕積立金がかかる。
・家族構成やライフステージに変化があっても、簡単に住み替えができない。
・場所によっては災害リスク(台風や水害、地震など)がある。
・売却時には希望価格で売れない、すぐに買い手がつかないなどの可能性がある。
・相続の状況によっては「持ち家」が負の資産になってしまう怖れがある。
そして最大の難点は、住宅購入には多額の資金が必要なことです。購入手続時に必要な「諸費用」は100万円以上の金額になることもあります。
頭金や手付金なども必要です。また「住宅ローン」を組む際は、金融機関からのローン審査をクリアしなければなりません。
勤務年数や所得などで審査されるので、転職したばかりなどの場合には審査が下りない場合もあります。
また、収入に見合う借り入れをしないと、月々の返済で生活が成り立たなくなってしまいます。ローン返済中に転職や失職などによって、収入が減って返済が困難になるリスクも起こりえます。
◆賃貸のメリット
・初期費用が比較的低額で済む。(敷金・礼金・契約金などで家賃の5カ月程度が相場)
・住宅ローン返済などによる将来的な破綻リスクはない。
・年収減や家族構成の変化が起きた際に、安い賃貸に移るなど引越しがしやすい。
・設備のメンテナンスなど、維持費が少ない。
・保有資産ではないので、不動産価格の下落などの影響を受けないし固定資産税などの税負担もない。
・将来的に相続などで悩むことがない。
賃貸のメリットは「住宅ローンの負債がない」「すぐに引越しできる」「相続の悩みがない」の3点に集約できるでしょう。特に「引越ししやすい」ことは大きなメリットの1つです。
例えば、老後は介護施設や高齢者向け住宅への入居を考えた場合でも、賃貸であればすぐに住まいを移すことができます。
収入や働く場所、ライフステージに合わせて最も住みやすい住宅を選ぶことができる点が、賃貸スタイルの魅力と言えます。
また、最近問題になっている「空家問題」「相続問題」に悩ませられることもありません。
◆賃貸のデメリット
・家賃を一生払い続けなければならない。
・住宅の改築、バリアフリー化など自由にリフォームができない。
・世帯主が死亡や急病などの場合でも住居費を払い続けなければならない。
・高齢になると、賃貸契約を結びにくい。
・年金収入のみだと、家賃の負担が大きく経済的にも精神的にも不安。
賃貸の主な問題は「家賃の負担」です。住居費は、一般に月収の25%以内が理想とされていますが、年金暮らしでは収入に対する家賃の占める割合が大きくなるので、経済的な余裕がないと精神的にも不安な生活になるおそれがあります。
持ち家と賃貸で一生の住居費はどれくらい変わる?
では、具体的な事例で実際に「持ち家」と「賃貸」の住居費を比較してみます。
今回の事例では30歳から85歳(平均寿命)になるまでの住居費についてシミュレーションします。
ただし、賃貸は55年間同じ物件に住むこととし、持ち家の場合の住宅ローン控除は含めないことにします。
◆持ち家の場合
住宅の購入価格は4000万円を想定(各項目の想定値は、平均的な相場を参考に設定)。
・住宅頭金(任意):400万円(ここでは住宅価格の10%を想定)
・諸費用(登記費用など):100万円
・住宅ローンの総返済額:約4,560万円
借入額3,600万円、期間35年、固定金利1.4%、ボーナス払いなし、月々の支払い額を約10万8,500円で試算すると、「総額約4,560万円(年間返済額130万2,000円)=10万8,500円×12カ月×35年」となります。
・固定資産税:約1,194万円
※(市街化区域に居住する場合は、さらに「都市計画税」も納める必要があります。)
固定資産税(標準税率1.4%)は住宅の購入価格ではなく、固定資産税評価額(地価公示価格の7割相当)にもとづいて計算します。
今回の事例では、固定資産税評価額を購入価格4,000万円の7割の2,800万円(土地1,500万円・建物1,300万円)と仮定します。
実際は、固定資産税評価は3年ごとに見直されますが、55年間変わらないものとして計算しています。
・土地:約3万5千円(固定資産税評価額1,500万円×小規模住宅用地の軽減措置1/6×標準税率1.4%)
・建物:18万2千円(固定資産税評価額(1,300万円×標準税率1.4%)
・合計:21万7千円
85歳まで住むと仮定すると、「約1,194万円=21万7千円×55年」となります。
・持ち家の費用合計額:6,254万円(頭金+諸経費+総返済額+税金・修繕費や管理費なし)
住宅の購入にかかる費用に固定資産税を加えると、30歳から85歳まで住む場合の合計費用の概算は約6,254万円です。
税金や住宅ローンの金利を合わせると、4,000万円の物件がこれだけの金額になることが分かります。また頭金がシミュレーションより少ない場合は、借入額が増えるため、負担する住宅ローンの金利の合計額もさらに増えます。
さらに、上記に加えて修繕費などを見積もる必要があります。
戸建住宅は外壁の修繕、水回りのリフォームなどがかかります。立地や住宅の構造にもよりますが、一般的な木造2階建て住宅でそれぞれ200万円前後とすると、55年間で約400万円の修繕費は必要です。
・戸建て住居(持ち家)の修繕費などを含むと、費用の合計額は約6,654万円になります。
◆賃貸の場合
賃貸の場合もシミュレーションしてみましょう。上記と同様に30歳から85歳まで賃貸で暮らすと想定し、賃貸住宅の家賃を払う場合も、住宅費は年収の25%程度までが適正とされており、住宅ローンを組む人と同額の月10万8,500円とします。
なお、今回の試算では賃貸家賃は55年間変わらないものとして計算しています。
初期費用は、敷金(2か月分)21万7,000円+礼金(1か月分)10万8,500円+前家賃(1か月分)10万8,500円+仲介手数料(1か月分+消費税)11万9,350円となり合計約55万円となります。
・初期費用:約55万円
・家賃の総額:約7,453万円(更新料込み)
家賃10万8,500円に入居期間55年で「約7,160万円=10万8,500円×12カ月×55年」となります。ただし賃貸住宅では、2年ごとに契約更新のための更新料が別途かかることが一般的です。55年間の更新料の合計は「約293万円=10万8,500円×27回」となります。
※(ただし、貸主によっては更新料が無い物件や逆に2か月という物件もあります。)
賃貸マンションの場合、家賃とは別に毎月、「管理費」や「共益費」といった共用部分の維持管理費用がかかるケースもあるので、55年間で約660万円(1万円(1カ月)×12カ月×55年)が加算されますが、ここでは管理費・共益費の掛からないアパートなどの物件で計算します。
・賃貸の費用合計額は:約7,508万円(初期費用+家賃総額)になります。
まとめ
上記結果から、持ち家と賃貸の差を計算すると、賃貸(約7,508万円)-持ち家(約6.654万円)=差額854万円となります。
このように、単純に計算すると費用面(管理費・修繕費などを含む)では、持ち家の方が賃貸より総額では安くなる可能性があります。
ただし、上記試算は一例ですので、住宅ローンの借入額、借入期間、金利などにより大きく変化します。
また、賃貸の場合はライフステージの変化に合わせて賃料の安い物件に引っ越すことも出来るので上記費用よりも総額費用を抑えることが可能です。
費用面の差だけではなく、持ち家と賃貸のそれぞれのメリット・デメリットに優先順位をつけて、自分のライフステージの考え方を照らし合わせて、どちらにするか判断すると良いと思います。