知ってて欲しい、屋根の種類とメリット・デメリット

屋根の形状には色々な種類があります。
それぞれの屋根形状について、外観イメージだけではなく、特徴も異なり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
それぞれの屋根形状の特徴を紹介します。

◆屋根の部位の名称

屋根のそれぞれの部位には名前がついています。名称を知っていると建築の際にも確認しやすいので覚えておきましょう。
特に主だった4つの部位についてご紹介します。

・ケラバ

切妻屋根や片流れ屋根で斜めになっている側の外壁から出ている部分を「ケラバ」といいます。
ケラバの先端には破風(はふ)という板材を取り付けます。
ちなみに地面と平行で、樋が付く側は「軒(のき」」です。

軒の先端には「鼻隠し(はなかくし)」という板材を取り付けます。

最近はケラバを全く出さないシンプルモダンの外観デザインの住宅も見受けられますが、ケラバの出がある方が雨漏りのリスクは軽減しますし、外壁の汚れ防止や劣化の軽減にもつながります。
できれば、ケラバを設ける方が良いでしょう。

・軒天(のきてん)とは

軒やケラバの裏側部分の事を言います。軒裏(のきうら)と言った方が、分かりやすいかも知れません。
軒天はケイカル板などの不燃材で施工される事が多いです。

小屋裏を換気するために、小さな穴が沢山開いている有孔ボードや軒天換気口などを使う場合があります。

・破風(はふ)・鼻隠しとは

屋根の先端部の板材の事です。破風(はふ)は屋根のケラバ側の先端部になります。
鼻隠し(はなかくし)は軒側の先端部になります。

木材は木口部から水を吸いやすいので、垂木(たるき)などの屋根組材の木口を塞ぎ、雨水を吸って腐食するのを防ぐ役割があります。

また、台風の時などに屋根組の空間に風が吹き込むと屋根が破損する可能性があるので、それも防いでいます。
また、鼻隠しには雨樋取付けの下地としての役割もあります。

◆屋根の種類と特徴

住宅の屋根形状としてはたくさんの種類がありますが、よく採用されるのが次の4種類です。

1.切妻(きりづま)屋根

日本だけではなく、世界中で最もポピュラーな屋根です。
和風でも洋風でもどちらの外観でも採用できます

切妻屋根はひじょうにシンプルな構造なので雨漏りのリスクが少なくなるのが最大のメリットです。
また、コストが抑えられるというメリットもあります。

新築時のイニシャルコストも抑えられますし、メンテナンスや将来の葺替えの際もコストを抑えられます。

小屋裏のスペースが確保しやすく、ロフトや収納場所に利用する際にも有利です。
南北方向に勾配を付けるとソーラーパネルを載せる面積も広く取れます。
どんな屋根材も採用可能で、洋風でも和風でも、どちらのデザインにも対応できます。

2.寄棟(よせむね)屋根

切妻に次いで、多く採用されるのがこの屋根です。
こちらも、世界中で一般的に見られる屋根なので、外観が和風でも洋風でも大丈夫です。

4方向が軒になり、低くなるので、北側斜線や道路斜線などをかわしやすくなります。
また、切妻屋根よりも外壁材の量が減るので、高価な外壁材を採用する場合には有利となります。

更にいずれの方向からも立面の面積が小さくなるので、耐風性に対して有利になるのがメリットです。

屋根の最も高いところから下っていく隅棟と呼ばれる棟があり、切妻屋根に比べると複雑な屋根組みになります。
しっかり施工されていれば雨漏りはしませんが、どうしても切妻屋根よりは雨漏りする可能性は高くなります。

デメリットとしては、ソーラーパネルを載せられる面積が少なくなります。
また、4方向全てに雨樋が必要になるので、わずかではありますが費用的に不利です。
小屋裏の容積が小さくなるので、収納やロフトとして利用する場合も不利になります。

3.片流れ(かたながれ)屋根

1方向だけに勾配を付けた最もシンプルな屋根形状で、モダンなイメージになります。
屋根組みは切妻屋根以上にシンプルで、雨漏りの可能性も少なくなります。

屋根の傾斜を南側に向けると、太陽光パネルを最大限に載せる事ができるメリットがあります。

屋根の傾斜を北側に向けた場合、高い位置に窓を設ける事ができるので部屋が明るくなります。
また、雨樋の取付けは1方向だけでよいのでその分、費用的に抑えられますが、雨水を受ける量が増えるので、注意が必要です。

外壁の面積が増えるので、高価な外壁材を採用する際にはすこし不利になります。
方向によっては立面の面積が大きくなるので、耐風性についてはデメリットになります。

4.陸(りく)屋根

勾配が無く、水平方向に平らな屋根の事です。
建築では「陸」というのは、水平方向に対し平らな状態の事を指します。
キューブ状の外観になり、モダンな雰囲気になります。

RC造(鉄筋コンクリート)や重量鉄骨造では陸屋根にする場合が多く、木造では採用される事は少ないのですが、陸屋根は無理という訳ではありません。

陸屋根の最大のメリットは、屋根部分を屋上スペースとして活用することができることです。
狭小地などでは、庭を設ける事が難しい場合がありますが、陸屋根であれば屋上庭園にしたり、物干し場としても最適です。

もう一つの大きなメリットはメンテナンスや点検が容易な事です。
平らなので、作業が簡単にでき、足場の設置なども必要ありません。

他にも、立面での面積が、どの屋根よりも小さくなるので、耐風性についても有利です。

平らなので雨漏りの可能性をデメリットとして挙げる事もありますが、積雪地帯で無ければしっかり防水工事をすれば心配ないでしょう。

ただ、北陸エリアでは屋上部分に積もった雪が溶ける際に、毛細管現象を起こして壁面部分に水が回るという事象が起きる場合があります。施工時には防水処理がどの高さまで施工されているか十分注意しましょう。

デメリットとしては、陸屋根は他の屋根と違い、小屋裏空間が無いので、真夏の日射の熱が屋根から伝わりやすくなります。
そのため、十分な断熱施工を心掛ける必要があります。

また、ソーラーパネルを設置する場合、角度をつけるための専用の架台が必要になり、コスト的には不利な場合があります。

 

以上、主な屋根形状を紹介しましたが、外観デザインとしても大きな要素となるので、設計の段階で十分に検討しましょう。

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