「親雪」雪国にみる雪と共に生きる知恵

雪国育ちの筆者が小学生だった30年ほど前、新聞で目にした言葉が「親雪(しんせつ)でした。親に意味をたずねると、「雪と仲良くして、雪を使って楽しむことだよ」と。当時、「雪は邪魔者」という考えが強く、そんなことができるのかと子ども心に思ったものです。しかし、実際に雪と寄り添って暮らしている方々もいるのです。

利雪、克雪という言葉も

前述の「親雪」以外に、「利雪(りせつ)」「克雪(こくせつ)」という言葉もあります。

  • 利雪:雪を資源として、有効に利活用すること。
  • 克雪:降雪、積雪に伴う被害を克服すること。

これらを踏まえて、雪国ではどのような生活をしているのでしょうか。

貯水槽ならぬ貯雪槽、氷室ならぬ雪室

新潟県十日町市、ここで、自宅に貯雪槽を作った方がいます。大きさ5m四方で半地下構造。急傾斜の屋根から、自然に滑り落ちる雪は積み重なり氷に近い状態に。そこに二重構造のフタ(屋根)を閉めれば、12月頃から貯蔵した雪は9月頃まで残るそうです。

用途としては、雪解け水を配管を通して循環させ、冷房代わりに。風呂・トイレ・洗濯といった生活用水に。さらに、貯雪槽内はセ氏0~3度の人工の雪室になるため、冷蔵庫代わりにも。

良いことずくめに見えますが、雪は同じ重さの水に比べ容積が大きく大型の貯雪槽が必要のため、費用面から一般家庭には高いハードルのようです。

一方、企業が大型の設備投資をして雪を活用する例もあります。経済の活性化・PR効果が得られれば、一般家庭への利用にも一役買うかもしれません。

雪よけのひさし、雁木(がんぎ)

新潟県上越市には総延長が約16㎞の「高田雁木通り」があります。公道が雪で埋もれても、人々の通り道だけは確保しようと、各戸が自宅前の私道にひさし(雁木)を架けて軒を連ねます。

一見アーケードのように見えますが、雁木の高さは家によって微妙に違うのがご愛嬌。助け合い精神の象徴とも言われています。

中庭は明かり取りと雪を落とすため

新潟県村上市では、密接して立ち並ぶ町屋の一部に中庭を設ける風習があります。普段から中庭に面したところは、自分の家だけでなく隣家の明り取りの窓になり、冬は屋根の雪を落とす空間になるそうです。屋根の雪を落とすのは、家を守るのに大切なことですが、下手をすれば事故につながるので、安全面も考慮されています。

雪に埋もれない高床式

こちらは、現在の建築の知恵。玄関や居室が床に埋もれないよう、1~2mの高床を採用した住宅を販売するメーカーもあります。更に、高床式で空いた床下のスペースに蓄熱式の冷暖房システムを組み込み、断熱材を入れて食品の貯蔵庫にも利用する新築プランを推奨しています。

雪と親しくなる方法は、これからも見つけられそうですね。

参考資料

  • 日本経済新聞(夕刊)「住まいナビ 雪に寄り添う新潟の知恵」(2017年11月15日)
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