近代建築の巨匠による住宅建築 傑作3選!
前回の記事では、日本の有名建築家が手がけた北陸の公共建築をご紹介しました。今回は、世界の有名な住宅建築を紹介してみたいと思います!「近代建築の三大巨匠」と呼ばれる、ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライトの3名が手がけた傑作を紹介します。
いずれも歴史的な住宅建築として、揺るがぬ評価を得ている作品です。建築の歴史を築いたとも言える巨匠たちの仕事を、住宅建築という視点から紐解いてみましょう。
ル・コルビュジェ「サヴォア邸」
おもにフランスで活躍した建築家ル・コルビュジェ(1887-1965)は、近代建築の成立に大きな役割を果たした巨匠です。鉄筋コンクリートを利用し、住宅を「床、柱、階段」の3要素で構成するという考え方(ドミノ・システム)は、今では当たり前となっている考え方ですが、元々は彼が提唱したものです。現代の建築をコルビュジェ抜きでは語れないというのも納得ですね。
クレジット:
La Villa Savoye / m-louis .®
1931年に完成したサヴォア邸。サヴォア夫妻が週末を過ごすための別荘としてフランス・パリ近郊に建てられ、コルビュジェが掲げた「近代建築の5原則」を体現した建物として知られます。
1階をピロティとして開放し、住居部分が宙に浮いたように見える外観は、とても有名です。壁ではなく柱で家を支える構造は、広い窓や、自由な壁の配置による広い室内空間を可能にしました。大きな窓で室内に明るい光を取り入れられるようになったのも、コルビュジェのおかげ!?屋上の庭園は壁面で囲われ、プライバシーにも配慮されています。
サヴォア邸は80年以上も前の建物でありながら、現代の建築の基本となる考え方が体現され、今見ても新鮮なデザインは、多くの人を魅了しています。
ミース・ファン・デル・ローエ「ファンズワース邸」
ドイツ出身の建築家ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)は、床と最小限の柱・壁のみによって室内空間を最大限に広くとり、用途を限定しない「ユニバーサル・スペース」という考え方を提唱しました。仕切りのない広い空間を用途に合わせて区切るやり方は、現代のオフィスビルでも広く採用されていますね。高層ビル建築の分野に大きな功績を残した巨匠です。
Farnsworth House / jalbertgagnier
1951年に完成したファンズワース邸は、アメリカ・イリノイ州に別荘として建てられた、美しい建物です。床と天井をつなぐ柱、そして全面ガラス張りの非常にシンプルな構造で、世界を驚かせました。
ガラス張りの室内は周囲の風景と一体となり、水平に広がる室内空間には「ユニバーサル・スペース」の考え方が体現されています。まぎれもなく傑作として知られる建築ですが、住宅としては少し住みにくそうですね。ミースはこのファンズワース邸に込められた思想をもとに、その後は、ビル建築でその才を発揮していきます。
このファンズワース邸、依頼主はミースの恋人だったとも言われています。建物の設計料などをめぐって訴訟騒ぎになるなど、人間臭いエピソードを持つ名建築でもあるのです。
フランク・ロイド・ライト「カウフマン邸/落水荘」
アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)は、日本では帝国ホテルの設計でも有名ですね。建築と自然が調和する「有機的建築」を追い求めました。20代より住宅建築を中心に脚光を浴びましたが、その後長い不遇の時代がありました。ふたたび表舞台に返り咲くことになった仕事の一つが、カウフマン邸/落水荘です。
By Daderot (Own work) [CC0], via Wikimedia Commons
アメリカ・ペンシルバニア州にあるカウフマン邸/落水荘は、1930年代後半に完成しました。
ぜひ写真に注目してください。驚きの立地ですね!!建物の真下に滝が流れ、自然の中に調和したこの建物は、住宅建築の最高傑作とも言われます。このような住宅は、世界を探してもほかにありません。水辺へ直接降りられる階段、自然の岩をそのまま取り込んだ暖炉、そしてBGMは流れ落ちる水の音…。滝と暮らすこの家は、まさにライトの目指した「有機的建築」の最高峰といえるでしょう!
70歳を迎えて再び輝きを取り戻した、ライトの代表作。溢れるばかりのクリエイティビティには本当に驚かされます!ぜひ一度行ってみたいものです。
これらの傑作には、今日の住宅建築やビル建築に連なる、建築の歴史が込められています。いずれも現在では保存管理されており、一般の見学も可能。旅行で近くを訪れることがあったら、ぜひ立ち寄ってみてくださいね。